掲載2011年3月28日

訳者メモ

奴らはこれから30年も戦争するつもりらしいです。ヒトラーの2039年の予言と妙に一致しているわけですが。とにかく絶え間なく人類を恐怖状態にしておきたいみたいですね。恐怖に怯えているぐらいなら、どうせ放射能汚染で死ぬと覚悟して開き直ってみませんか?

(参考) 終末予言の論理的解明 

リビア:ワシントンによる
「大きな中東を創造するための破壊」第二幕

Creative Destruction Part II:Libya in Washington's Greater Middle East Project

F・ウィリアム・イングドール

By F. William Engdahl

(http://engdahl.oilgeopolitics.net/)

2011年3月26日

偶然の一致を信じない人々にとって、2003年3月19日と、オバマ政権が2011年3月19日にリビア爆撃を命じたことは重要である。表面的には、一般国民を保護するために「飛行禁止区域」を設定することが目的ということになっている。

「飛行禁止」の攻撃は、国連決議を経て、米国の指揮の下、いかがわしい性急さで開始された。現在までのところ、米、英、仏の空軍・戦艦が攻撃を指揮している。リビアの標的(非公表)に対し、トマホーク巡航ミサイルとGPS誘導爆弾が嵐のように降り注ぎ、多くの一般人が死亡したと伝えられている。今のところ、いつ終わるのか不明である。

8年前のこの日、ブッシュ政権は、「衝撃と畏怖作戦」を開始し、イラクの軍事的な破壊と占領を始めた。大量破壊兵器の脅威を除去するためと言われたが、後に確認されたようにそのようなものは存在しなかった。今回と同じ三人組(米、英、仏)がイラク領空に対する違法な飛行禁止区域作戦を10年以上続けた後に、イラク侵略が行われた。

神秘的なペンタゴンが数霊遊びをしている可能性はさておき、それよりも重要なのは、2010年12月以来、イスラム世界全域において民主主義と人権の旗印の下にワシントンが火を着けた一連の政権不安定化・ドミノ倒しの背景にある究極の目標である。

ワシントンは、米国が率いるリビア爆撃を、名目はどうであれ、公式に指揮するようにNATO加盟国に莫大な圧力をかけているが、これはAFRICOMを介してペンタゴンが軍事作戦の調整で中心的役割を果たしていることに注目させないよう、ワシントンに隠れ蓑を与えるためである。このことからも、北アフリカと中東イスラム諸国に広がっている大動乱は、この執筆時点では、(一部のNATO加盟国が数十年続くことを想定していることを匂わせている)第三次世界大戦の初期段階の攻撃のように思える。

第一次世界大戦、第二次世界大戦と同様に、今回の戦争も、かつてデービッド・ロックフェラーやジョージH.W.ブッシュが「新世界秩序」と呼んだものを拡大するために起こされることになる。

カダフィの本当の「罪」

食糧価格の高騰と大幅な富の格差に人々が苦しんでいるという議論も納得できる面があるチュニジアやエジプトと、カダフィのリビア(正式にはリビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国と呼ばれている)は非常に異なる。

私が現地の情報を知っているアフリカ人から聞いた話によると、リビア人はアフリカ大陸で最も高い生活水準を楽しんでいた。カダフィは、国民が不平不満をこぼす余地がない状態を保ちながら、42年間トップの座に留まっていた。大部分の医療サービス、教育、燃料は、国が補助していた。カダフィのリビアは、アフリカで最も乳児死亡率が低く、最も長寿だった。彼が40年前にイドリス王を苦悩させ、権力を奪ったとき、識字率は10%以下だったが、今日では90%を越えている。これは典型的な専制君主が残せる功績ではない。栄養不良は人口の5%未満であり、米国よりも少ない。ここ数ヵ月の食料品価格の上昇に対応し、カダフィは食品に対する税金を全廃していた。貧困ライン以下で生活する人々の割合もオランダ以下である。カダフィは、彼のモデルをイスラム社会主義の一形態と呼んでいる。国民は圧倒的にスンニ派であるが、政治は世俗的であり、神権政治ではない。[1]

では、なぜ米国はカダフィにそれほど敵対しているのか? それは単純な話だ。カダフィが「プログラムに沿っていない」からである。

カダフィは、ワシントンに深い不信感を抱いていることを繰り返し表明している。それも根拠なく不信感を持っているわけではない。彼は、次第にペンタゴンのAFRICOMに奪われつつあるアフリカの独立した声を創り出そうと絶えず努めてきた。1999年には、アフリカの旧植民地国の国際的主張を強固にするため、アジスアベバを拠点にしたアフリカ連合の創設を提案した。2009年の汎アフリカ・サミットで、彼はアフリカ合衆国の創設を訴え、未開発の鉱物資源と農業の将来性という意味では、おそらく世界で最も豊かな大陸の経済力の結束を呼びかけた。

バラク・オバマ、デイビッド・キャメロン、ニコラス・サルコジなどの政治家には、メッセージに素敵なタッチを加えてくれるヒル&ノウルトン社やサーチ&サーチ社のような優れた西側のPR企業がついているが、カダフィにはそのようなものはなかった。また、ワシントンの対抗相手のように写真うつりが良いわけでもなく、彼の恐ろしい顔のため、マスコミはヒトラーの再来のような存在として簡単に悪役に仕立てあげることができた。

だが、カダフィは、別の理由で、ワシントンの悩みの種である。彼は、9/11のハイジャック犯は米国で訓練されたと言っており、それでも9/11のときにはアメリカ人に献血するようリビア人に訴えた。これまで何十年もカダフィは、米国や旧ヨーロッパ列強に支配されないアフリカ諸国の独立の声(アフリカ合衆国)をまとめる努力をしてきた。

西側のマスコミが醸成している悪魔的なイメージを取り除いて考えると、エジプトのナセル、イラクのサダム・フセインが排除され、シリアがイランと足並みをそろえた今となっては、カダフィという人物は、政治権力の座に残っている穏健な社会主義・汎アラブ主義者の世代の最後の人物である。[2]

カダフィが残っている限り、リビアは、ワシントンがイスラム世界10億人(モロッコからアフガニスタンまで、アフリカ・中東の全域)に必死になって押し付けようとしているグローバル「自由市場」の雛型に対抗する都合の悪い経済体制であり続ける。この拡大する戦争を駆り立てている勢力にとっては、自らの経済が刻一刻と崩壊している中、戦争と混乱を広げることで、アメリカ単独のスーパーパワーが生き残れるかどうか、「アメリカの世紀」もしくは、古風なネオコン用語では「新しいアメリカの世紀」の生き残りの問題なのである。

アムル・ムーサといかがわしい政治ゲーム

エジプトの外交官アムル・ムーサ(アラブ連盟の代表者)が、サウジアラビア、クウェートなどアラブ諸国の神経質な同胞たちに対し、飛行禁止区域に賛同すればワシントンの寵愛を受け続けることができ、エジプトのホスニ・ムバラクやチュニジアのベン・アリのようになる運命を回避できると分かりやすく説得し、彼らを都合良くねじ伏せると、国連安保理決議を受けた米・英・仏の協調によるリビア軍事攻撃(オデッセイの夜明け作戦)が驚異的な迅速さで始まった。明らかにワシントンは、3月19日の遥か前から軍事行動を計画していた。

何週間にもおよぶ詐欺的な外交と、明らかに撹乱を意図したロバート・ゲイツ米国防長官からの発信(リビアの飛行禁止区域に反対する主張をしていた)に続き、その飛行禁止区域を支持する主張をしていたヒラリー・クリントン国務長官、弱気で動揺しているように見える米国の大統領(アフガニスタンで戦争の拡大を命じ、グアンタナモのCIA拷問刑務所を擁護したノーベル平和賞のオバマ大統領のことだ)は、基本的にリビア国内の武装した部族が既存の国家元首に反乱・蜂起しているだけで、米国民の生命が危険にさらされているという事実も、米国の領土が脅威にさらされているという事実も無いにもかかわらず、主権国家のリビアに対して事実上の宣戦布告を行った。さらに、カダフィのリビアは、近隣国に対して侵略の脅威になったこともない。これは忘れられているかもしれないが、国連介入の必須の前提条件である。

1990年代のボスニアやイラクでの経験から明らかなように、飛行禁止区域は中立的な軽い話ではなく、標的国の対空戦闘能力を破壊することも含み、主権国の領空を暴力的に支配するわけであるから、全面的な戦争行為に他ならない。

リチャード・フォーク(卓越した国際法の学者で国連パレスチナ人権問題に関する特別通信員)は、国連が基本的な介入条件を完全に欠いたままリビアに介入していると注意している。

ワシントンでは、リビアの反乱軍を支援する空爆と飛行禁止空域を超党派的に要請しているが、とりあえず歴然としていることは、国際法や国連の権限という観点で妥当性があるかどうか全く考慮されていないことだ。政府の誰として、法的な合理性を繕おうとさえしていない。指揮している「リアリスト」たち、その言葉を繰り返すだけの主流マスコミだが、彼らは攻撃的な戦闘に着手するに当たって、法的な偽装を整える必要性さえ感じていない。

リビア領空に飛行禁止区域を設定することは明らかに戦争行為に該当するはずであり、想定されているカダフィの軍事要塞に対する空襲も、もちろんそうである。国連憲章の核心となっている法的義務では、国境を越えた武力攻撃後の自衛、もしくは、国連安全保障理事会の決定による命令として正当化されるものでない限り、加盟国はいかなる武力行使も控えなければならない。

こうした武力行使を法的に裏付ける条件はわずかも存在していないが、マスコミやワシントンの政界では、まるで議論を要する問題は、実現可能性、コスト、リスク、アラブ世界からの反発の可能性だけであるかのように議論が進められている。[3]

法のルールは、野蛮な「力は正義なり」のルールに優先するという現在忘れられている概念を守るため過去50年ほどを費やしてきたフォークであるが、「人道的な非常事態においては、『例外状態』があり、事態を悪化させない限りは、自発的な連帯によって実行される介入が許されるという議論もありうるのではないだろうか?」という言葉遊び的な問いにこう答えている。

リビアに関しては、人道的な見地からどんなに不快であろうとも、カダフィ政権が主権国家を合法的に代表している事実は考慮に入れる必要がある。一部の諸国の連帯によるものはもちろんのこと、国連による国際的な武力行使についても、国際的な平和と安全のために不可欠であると安保理が明示的に認めたものでない限り、国連憲章の第2条(7)で禁止されている主権国家の内政に対する違法な干渉に該当する。

さらに、もし干渉が行われたとしても、リビアの人々の苦難を緩和できる確証はなく、より人権を尊重し、民主的な政治参加に取り組む政権になるという確証もない。

私がリビアの議論の中で非難しているのは、主に3種類の政策的欠陥である。国際的な武力行使に関する国民的論議から、国際法と国連が無視されていること。南の社会の自決力に対する敬意の欠如。脱西洋化され、ますます多極的になっている旧植民地世界に適切な政治と倫理に気を配っていないこと。[4]

今回ワシントンが戦争に突進したことに関して特筆すべきは、カダフィが空軍に命じて(西側メディアによると)「非武装の一般市民」を銃撃したというイメージが広がっているが、これについて第三者による検証がまったくなされていないことである。今回の場合、CNNの偽装画像は中立的とは言えず、BBCもそうだ。リビアの反体制派でリビア救済・国民戦線の代表であるIbrahim Sahadは、いみじくも米国のホワイトハウスの前に立ってカダフィの罪を告発した。その内容が正確かどうか、わざわざ中立の立場で確認しようとする者はいなかった。

更に特筆すべきことに、アラブ連盟がリビアの飛行禁止区域設定に合意すると、国連安保理内の反対意見は崩れ、ワシントンは望んでいた軍事行動に対するまことしやかな国際的支持を望み通りに得ることになった。

安保理での票決は、主要五カ国(拒否権を持つロシアと中国、そしてインド、ドイツ、ブラジル)が棄権したが、10対0だった。米国、フランス、イギリスは、速やかな承認を求めた。一流の西側メディアが都合良く無視していたのは、リビアの隣国であるアルジェリア、チュニジア、アフリカ・ユニオン全体が飛行禁止区域に反対していた事実である。「我々の楽譜で歌っていない者は存在しないことになる・・・」

名目上は、飛行禁止空域の決議を要請したのは、リビア反乱軍の暫定国民会議とアラブ連盟である。実際には、インドの外交官をしていたM. K. Bhadrakumarが述べているが、「国連安保理に近づくための隠れ蓑を必要としていたNATOとEUが、アラブ連盟に提案するよう指示したという単純な事実がある。(略)以前は西側諸国は、アラブ連盟とアフリカ・ユニオンのことを「地域の意見」を代弁する同じ声だと言っていた。今やアフリカ・ユニオンはそれほど重要でないようだ。迷惑な存在になったからだ。アフリカのリーダーたちは、アラブの遊び好きな支配者と比べ、なかなか割れないナッツであることが判明している」。[5]

クウェート大使とトルコ大使を務めたことのあるBhadrakumarは、「アラブ連盟の決議は、アムル・ムーサ(アラブ連盟の事務総長)にねじ込まれた。ムーサは、ホスニ・ムバラクの跡を継いでエジプトの次の大統領になろうと希望している。地位の存続を米国に依存しているアラブのリーダーたちを説得することは簡単だった」とも述べている。[6]

抜け目なく生き残る人間であるムーサは、公然・非公然を問わず、ワシントンの支援なくして大統領になるチャンスは無いことを知っている。

「自発的でない同盟」

一通りワシントンの操縦が終わると、事実上の「自発的でない同盟」を支えた者たちはワシントンに裏切られたことに気付き始めた。トリポリなどリビア全域で、軍だけでなく一般市民も標的にした容赦ない爆撃がなされたことが明らかになると、ムーサは、まるでそうした可能性を考えてみたこともなかったように、一般市民を殺害することは国連の計画にはなかったと都合良く主張した。

ロシアのプーチンは、リビアとイスラム世界に対する理由のない米国の行動のことを、現代の「十字軍」だと言った。中国は、米国の干渉を非難した。残念なことに、影響力を行使できたはずのロシアも中国も、国連安保理の決議のときには棄権してしまった。おそらくアラブ連盟の強力な産油国と疎遠になるのを懸念したためであろう。

国連やアラブ連盟の決議の遥か前からリビアに対する軍事行動を計画していたと思われるワシントン、ロンドン、パリに散々に騙されたことに気付いた欧州のNATO加盟国など(NATOに加盟しているトルコを含む)は、即座に猛烈な抗議を始めた。

NATO内の統一が砕けると、軍事作戦の目的や方向性に関する意見の相違から、ドイツは当該地域より軍事支援機器・物資を引き揚げた。イタリアは、リビアの石油資源をイタリアが国家管理しているENI/AGIPから横取りしようとして飛行禁止区域を支持しているとしてフランスを非難した。また、イタリアは、NATOが正式に統轄するのでなければ、米・英・仏が、イタリアの基地を使用する権利を取り消すと脅した。執筆現在、ワシントンの軍事的冒険に対する真の国際的支持は、2003年のイラク侵入のときよりも更に得られていない。

一方、英国政府の大臣たちは、カダフィの暗殺を求めており、中東と北アフリカの戦争は「30年」ほど続くと述べている。[7]

また、最終的に「アメリカの世紀」に道を開いた20世紀の大混乱とヨーロッパ列強の解体と比肩させる者もいた。1914年から1945まで続いた20世紀の混乱は、歴史書では第一次世界大戦、第二次世界大戦として記録されているが、実態には世界覇権に向かう一つの30年戦争だった。

この壮大なコンテストの最終的な「勝者」だった米国のエリート集団は、当時絶大な権力を持っていたロックフェラー家の周りに集まり、『タイム』『ライフ』の発行者ヘンリー・ルースが1941年の社説で「アメリカの世紀」と名付けたものを宣言した。

その「アメリカの世紀」が現在は危険な衰退期にある。この長引く腐敗と自己破壊の死の苦悶が明確に始まったのは、リチャード・ニクソン大統領が運命の決断(ブレトンウッズ通貨協定を一方的に破棄し、米ドルと金の連動を断ち切る決断)をしたことが象徴的であるが、1971年のことだった。

また石油のための戦争か?

そうだ。リビアの石油が、英・仏・米の戦争の熱意の背後にある要因であることは事実である。中東全域の石油資源に精通しており、内部事情にも詳しい石油サービスの専門家から最近になって個人的に私が聞いた話では、リビアにはアフリカ内でも傑出して大きな未開発の石油資源があり、「ほとんど硫黄分の無い、最高品質の原油」だという。

これまで、カダフィを転覆させようとCIAがクーデタと暗殺を繰り返し試みてきたが、カダフィは慎重であり、石油資源の全ての管理を英米の石油カルテルに明け渡すことはせず、国の建設のために石油の管理を自前で保持してきた。これは明らかにワシントンの好むことではない。

意味深いことに、西側が支援した反乱が始まった場所は、東側のベンガジ地域にあるリビアの石油インフラの中心地だった。ベンガジは、リビア最大の油田の北にあり、大部分の石油とガスのパイプライン、精製所、LNG港と近接している。Mustafa Abdul Jalilが率いるリビア共和国の暫定国民会議の拠点もそこにある。

しかし、実際の狙いは、ジョージ・W・ブッシュが2003年のイラク侵入の時にワシントンの「大きな中東プロジェクト」と呼んだものであり、それを単なる石油の争奪のためだと目的を矮小化するのは間違いである。

カダフィから米国に依存する人形に政権を移し、国の組織を解体して千年以上も文明を逆戻りさせることは、よく練り上げられた米国の長期戦略の中で重要なステップになっている。それは、1991年にジョージ・H・W・ブッシュが、また、その後自叙伝でデービッド・ロックフェラーが、誇らしげに提唱した「新世界秩序」に全イスラム世界を組み込む試みである。[8]

アメリカ中心の世界帝国と呼ぶ人もいる。「ビッグマック、ケンタッキー・フライドチキン、ゼロ・コーラを全世界に! 貧困、混乱、殺戮、オーウェル的均一性。新世界へようこそ。我々の命令通りに行動してもらおう」

「保護する責任が・・・」

先にエジプトとチュニジアで米国が扇動した「自然発生的」な「民主主義」の反乱と同様に、ワシントンは舞台裏から慎重にカダフィの後継を画策している。[9]米国の政策を批判する人々が多く指摘しているが、リビアへの米国の干渉は一般人を保護するための中立的な行動ではなく、リビア東部のベンガジで十分に武装した反体制勢力へと軍事的にバランスを移すことで、強制的な政権変更を画策する試みである。

内戦を起こした武装蜂起からカダフィ政権の軍が領土の制御を奪回するのを阻止することで、国際的な主権の原則は、慎重に窓から投げ捨てられ、「保護する責任」という曖昧で根拠の無い概念に置き換えられた。こうした武力行使の慣例を作ることは、将来的に恐るべき影響があるということを、今やベルリンから、ローマ、北京、モスクワに至るまで多くの政府が気付いている。

この「保護する責任」という曖昧な概念を世界が受け入れてしまうと、いかに曖昧な定義とはいえ、国家主権に勝ることになる。「人権侵害」を阻止するという名目さえあれば、中国であろうとロシアであろうと、どんな場所であれ、ワシントンが飛行禁止区域を設定することを止めるものが何かあるだろうか?

その曖昧な「保護する責任」を定義するのは誰か?もちろん、ワシントンだ。今日、国際政治の世界で真実のラベル表示があるなら、「ワシントンが自ら定義した利益を保護する責任」となるはずだ。

バラク・オバマは、国連決議から数時間の内に公然とリビアの反体制勢力をワシントンが支持することを宣言した。米国が中立的な平和の調停者として役割を果たす意思がないことを明確に示したのである。3月23日のサンサルバドルでのCNNスペイン語インタビューにおいて、オバマは、リビアの反体制運動が、米国が率いる軍事攻撃の保護を受け、カダフィを権力から追放するだけの組織力を持つことになるだろうという「希望」を表明した。[10]「政権交代」は、ワシントンのゲームである。

驚くこともないが、それはフランスのゲームの名前でもある。3月25日、フランスのサルコジ大統領は、カダフィの追従者に彼の「残虐な習慣」を放棄し、反対勢力に参加するよう訴えた。「我々は、カダフィの取り巻きに打開策はあることを告げ、彼らとカダフィの政治体制を急いで解体しなければならない」とサルコジは語った。「カダフィの狂った残虐な方法を放棄した者には、新しい民主的なリビアの再建に参加することができる」

国連の飛行禁止区域決議は、大部分のマスコミ報道よりも、遥かにはるかに威力がある。それは事実上の、主権国家および既成の機能している政府に対する軍事的・経済的・金融的な戦争の宣言である。飛行禁止区域の承認に加えて、国連決議は、「人道的」な飛行と国連およびアラブ連盟が認めた飛行を除き、「市民の保護に貢献するため、リビアのアラブ・ジャマヒリアの空域のあらゆる飛行を禁止」した。

これは、制裁を監視している国連の委員会の事前承認なしに、リビアが所有・運営・登録する全ての飛行機が離陸・着陸・上空通過するのを阻止することを国連加盟国に命令するものだ。そして加盟国は、軍事物資や武装兵士を積んでいると信じるに足る「合理的な根拠」があれば、「空港・海港など領土内および公海でリビアと行き来する船舶や航空機を検査する」ことが認められる。

リビアの棺に釘を打ち込むために、5つの金融機関の資産を凍結している。リビアの中央銀行、リビア投資局、リビア外国銀行、リビア・アフリカ投資ポートフォリオ、リビア国営石油会社である。[11]

奇妙なリビアの「反対勢力」

いわゆるリビアの反対勢力は、政治的日和見主義者、そして、いわゆるリビア・イスラム戦闘集団のAbdel Hakim al-Hasidi(アフガニスタンのアルカイーダと密接なつながりがあることを公然と認めている)のように過去にCIAで訓練を受けたムジャヒディンのゲリラの寄せ集め状態である。[12]これで、最近では最も奇怪なワシントンの軍事的な改革運動の信頼性も十分に確認できるというものだ。

また、反対勢力には、カダフィ政権で高い地位にあったが米・英・仏が支援する反体制サイドの方が好条件であると判断した者や、地球上で最も豊かな土地の支配を握るチャンスを嗅ぎ付け、米・英・仏にそそのかされたただの凶漢もいる。

こうした人々の「反対運動」は、チュニジアなどとは異なり、決して「非暴力的」ではなかった。

それは最初から武力による反乱であり、部族と部族の戦いであり、民主主義への熱望が高まったものではなかった。NATO加盟国はワシントンから、ペンタゴンの「フル・スペクトラム・ドミナンス」を遵守しない暴君を追放し、別の暴君集団を支援するように指示されている。

世界の大部分にとってリビアの「反体制勢力」は、いまだ「自由、民主主義」を巧みに配置されたカメラに向かって叫び、石を放り投げている若者というCNNやBBCが流す漠然としたイメージである。だが、実際は全く異なる。Stratforのジョージ・フリードマンが指摘したように、「リビアの反乱は、部族と有力者の一群で構成されており、リビア政府内の人間もいれば、軍の人間もおり、長らく政権に反抗してきたその他大勢がいる」。

そして、「何か大衆的な、リベラルな民主主義の蜂起がリビアで起きていると思うのは、非常に大きな間違いである。大部分の国では、物語が成立するように捻じ曲げられていなければならないが、リビアでは完全に崩れている」と付け加えている。[13]

カダフィに反対する主要な勢力は、二つの奇妙な組織から出現していることが明らかになりつつある。リビア救済の国民戦線と、Barqa(リビア北西地域の旧名称)イスラム首長国を自称する奇怪な組織である。その指導層は、前に刑務所から釈放された元アルカイダの戦士たちで構成される集団だと主張している。彼らの流血の記録は、今でも印象的である。

現在のリビアの主な反体制グループは、NFSL(リビア救済の国民戦線)であり、これはサウジアラビア、CIA、フランス諜報機関から資金提供を受けていると伝えられている。彼らは、他の反体制グループと合流し、リビア反体制派の国民会議を結成している。2月17日にリビアを混沌に陥れた「怒りの日」を呼びかけたのは、その組織だった。[14]

NFSLの鍵となる人物は、都合の良いことにワシントンに住んでいるIbrahim Sahadである。議会図書館の文書によると、SahadはCIAが1984年にリビアのクーデタを起こそうとして失敗したときに利用した男である。この文書では、CIAが失敗したクーデターの前後を通じ、NFSLを訓練し、支援していたことが確認できる。

3月11日に、フランス政府は国家として初めてNFSLを承認した。NFSLは、現在、リビア暫定国民会議を自称する無組織の上部組織を隠れ蓑にして活動しているが、この国民会議は昔からのNFSLと変わりはなく、長年にわたりサウジアラビア、フランス、CIAに資金支援されてきた集団である。[15]

新しい上部団体の暫定国民会議は、昔からのNFSLと変わりないと言われており、選挙によらない年老いた君主主義的ビジネス亡命者でカダフィからの離反者の集団であり、石油利権のパイの大きな一切れをつかみ取るチャンスを嗅ぎ付けて、その栄光の夢を追うためにサウジアラビア、フランス、CIAの支援を受けている人々である。現在、こうした人々のために、NATOは戦っている。

Mustafa Abdul Jalilが率いるリビア共和国の暫定国民会議は、ベンガジに拠点を置き、リビアの東半分の大半を掌握している。今のところ、フランスとポルトガルは、この会議をリビア唯一の「合法的な代表」として公式に認めている。

暫定国民会議には、元司法大臣のMustafa Abdel-Jalilや元内務大臣Abdel Fattah Younis将軍(カダフィ政権から離反していた)など元カダフィ政権の内部者も含まれている。彼らは、結成直後からワシントンなど西側政府に支援を要求していた。彼らは、カダフィを倒すため、西部の政府管理区域に対する武力攻撃を行いたいと思っている。チュニジアとエジプトでの反乱も自発的なものとは程遠いものだったが、これも決して自然発生的で純真なツイッター民主主義革命とは言いがたい。[16]

3月初めに暫定国民会議は、事実上の外務大臣Ali al-Essawiと、Abdel-Jalilの仲間の Mahmoud Jebrilをパリに派遣した。そこでトリポリの将来の政権で明らかに有利な立場を得る機会を嗅ぎ付けたフランス政府は、リビアの人々を「合法的に代表」する者として暫定国民会議に初の承認を与えた。[17]その直後からフランスは、新しく見つけたベンガジの反乱勢力の友達のために(当然ながらフランスが率いる)軍事介入することを率先して唱えるようになった。

フランスが烏合の衆のベンガジ反乱勢力の外交筋で有利な立場を築いたように思える一方で、イギリスは、元カダフィの内務大臣の Abdel Fattah Younis将軍を味方にし、軍事筋に着目したようである。Younisは、現在、暫定国民会議の「軍」を指揮している。[18]

ヒラリー・クリントンも反乱軍と米国の結びつきを強化するために動いている。伝えられるところでは、3月13日にヒラリーはカイロで反乱軍のリーダーたちと会っている。ツイッターの若者がムバラク退陣に尽力して以降、カイロは、ペンタゴンに依存するエジプト軍評議会が堅固に管理する場所になっている。ヒラリーは、この会合に関し、「我々は、リビア内外の反対勢力に接触している。私は、ここ米国でも、来週の訪問時にも、彼らと会い、米国などが更に何をできるか話し合うつもりだ」と発表している。[19]

リビアの西部で戦っている反対勢力はフランスが承認した第二のグループ(Barqaイスラム首長国という野心的な名称を名乗っている)が率いている。このグループは、「老齢の亡命者と旧カダフィ政権の離反者で、古いイドリス王の君主主義の旗を振っている」集団と言われている。[20]

人口統計学的に駆り立てられた熱情がほとばしる若者のツイッター革命ではない。

結論

この執筆現在、明白なのは、リビアへの新しい戦争の開始には、他の誰よりも、ワシントンとその「自発的でない同盟」にとって遥かに大きな問題だということである。これが新しい世界大戦の第一弾を意味するのか、あるいは、NATO内外の様々な政府にペンタゴンの戦争機構からの押し付けに対抗する強さがあるのかどうかは、不明である。明白なことは、2010年末にチュニジアで始まった最近の出来事は、米国が画策する「創造的破壊」というますます死に物狂いになっている壮大な戦略の一部に過ぎないということである。

今のところ、影響を受けた地域に住んでいる人々にとって、とても創造的と言えるものにはなっていない。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

脚注

[1] David Rothscum, The World Cheers as the CIA Plunges Libya Into Chaos, Global Research, March 2, 2011, accessed in http://globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=23474.

[2] Ibid.

[3] Richard Falk, Kicking the intervention habit: Should talks of intervention in Libya turn into action, it would be illegal, immoral and hypocritical, 10 March, 2011, accessed in http://english.aljazeera.net/indepth/opinion/2011/03/201138143448786661.html

[4] Ibid.

[5] M K Bhadrakumar, America's man in Egypt Amr Moussa pushes No Fly Zone call through Arab League with Saudi help but African Union rejects it, Asia Times, March 15, 2011, accessed in http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/MC15Ak02.html

[6] Ibid.

[7] Daily Mail Reporter, Germans pull forces out of NATO as Libyan coalition falls apart, London Daily Mail, 23 March, 2011.

[8] David Rockefeller, Memoirs, New York, Random House, 2002, p. 405.

[9] ウィリアム・イングドール、 エジプトの革命:「大きな中東」を創造するための破壊?

[10] CNN Wire Staff, Obama hopes resurgent Libyan opposition can topple Gadhafi, CNN, March 23, 2011, accessed in http://edition.cnn.com/2011/POLITICS/03/22/obama.cnn.interview/index.html

[11] UN security council resolution 1973 (2011) on Libya, reprinted in The Guardian, March 17, 2011, accessed in http://www.guardian.co.uk/world/2011/mar/17/un-security-council-resolution.

[12] Praveen Swami, et al, Libyan rebel commander admits his fighters have al-Qaeda links, The Telegraph, London, March 26, 2011.

[13] George Friedman, Libya, the West and the Narrative of Democracy, Stratfor, March 21, 2011, accessed in http://www.stratfor.com/weekly/friedman_on_geopolitics

[14] David Rothscum, op cit.

[15] Ibid.

[16] Anthony Shadid and Kareem Fahim, Opposition in Libya Struggles to Form a United Front, The New York Times, March 8, 2011.

[17] Stratfor, Libya's Opposition Leadership Comes into Focus, March 20, 2011, accessed in http://www.stratfor.com/analysis/20110307-libyas-opposition-leadership-comes-focus

[18] Ibid.

[19] Robert Dreyfus, Will the World Recognize the Libyan Opposition?, The Nation, March 10, 2011, accessed in http://www.thenation.com/blog/159138/will-world-recognize-libyan-opposition.

[20] Matt Checker, Reasons against "intervention" in Libya, accessed in http://www.spiral-m.de/blog.html