掲載2012年1月12日

訳者メモ

ロシアのプーチンに対する抗議運動は、いつもの米国の「民主主義」兵器を使った政権交代工作のパターンの繰り返しである。なぜアメリカはプーチンを引き摺り降ろしたいのかという疑問をイングドールが分析している。

私は、五島勉氏がヒトラー予言を解読して述べている「ユダヤを倒すレットバタリヨン」とはプーチンのロシア勢力かもしれないと考えている(20100706.html)が、これは何とも謎である。ヒトラーが英米の軍需産業や金融業界とつながっていたことは事実であり、ドイツとソ連を互いに戦争で疲弊させて最終的にアメリカの優位を築くのに貢献したという解釈もできる一方、ヒトラーはドイツ国民にとっては理想的な「高潔」な政治家であったことも事実である(20100623.html)。この両義性は依然として謎であり、プーチンにも似たようなところがある。

デーヴィッド・アイクは、モスクワの反プーチン運動はアメリカの工作であると知った上で、元日のニューズレターで、プーチンもやはりオバマと同じで、究極的には操り人形に過ぎないと述べている。だが、オバマのようなロボットではないことも確かだと私は思う。

いずれにしても、この記事で明らかなように、一つの次元では、アメリカはプーチンを邪魔だと考えているのは確かなようだ。

ワシントンがプーチンを引きずり降ろしたい理由

Regime Change in the Russian Federation? Why Washington Wants ‘Finito’ with Vladimir Putin

F・ウィリアム・イングドール

By F. William Engdahl

(http://engdahl.oilgeopolitics.net/)

2012年1月10日

ワシントンは、去年の春にはエジプトでKefaya(もうたくさんだ!)と叫んだが、今回は明らかにプーチンの退場を望んでおり、「もうたくさんだ!」という意思表示をしている。ヒラリー・クリントンたちは、ロシアの次期大統領と見込まれているウラジミール・プーチンのことを、彼らの計画に対する大きな障害だと判断したようだ。だが、その理由がわかる人はほとんどいない。現在ロシアは、中国、そしてイランともかなりの程度歩調を合わせ、単独の超大国〔アメリカ〕が支配する世界に対し、唯一実効ある抵抗の機軸を、よろめきながらも形成している。

ロシアの議会選挙ではプーチン首相の統一ロシア党の支持率の急激な低下が示されたが、その選挙結果の発表から数日後の12月8日、プーチンは、米国(特にヒラリー・クリントン国務長官)がロシアの反体制・抗議運動を煽り、選挙に対する抗議をけしかけたとして非難した。「(米国の)国務長官は拙速に選挙を評価し、民主機構・人権局の監視員(著者註:OSCEの国際選挙監視員)から資料が届くのも待たず、選挙は不公平で不当だったと言った」とプーチンは述べている。[1]

そしてクリントンの時期尚早なコメントは、米国政府の支援を受けて抗議を行おうと待ち構えている反体制グループに向けて発する必要があった信号だったと、プーチンは主張した。ロシアの経験豊富な諜報員は、クリントンのコメントは「アメリカ国務省とともに積極的に活動を始めた運動家たちに向けた合図」となったと述べている。[2]

西側の主要メディアは、プーチンの発言を控え目に扱うか、もしくは、ロシアに新たに出現した反対運動の主張にばかり注目するかのどちらかだった。少し調査するだけでも、プーチンは自国の政治プロセスに介入してくる米国政府の厚かましさを、どちらかといえば、控え目に表現していたことがわかる。今回の場合、チュニジアやイエメンやエジプトとは違う。経済的には依然として弱小かもしれないが、ロシアは世界第二位の核大国である。ヒラリーは、核爆弾の火遊びをしているのだ。

民主主義とは別の何かが・・・

多くの人が「民主主義」として想像していることの実践者という意味では、プーチンが民主主義の世界チャンピオンではないことは確かだ。何ヵ月か前に、プーチンと現大統領のメドベージェフは、3月4日の大統領選挙をもって役割を交替することに合意したと発表したが、これは粗野な権力政治と密室取引の現れとして多くのロシア人にもショックなことだった。その上でであるが、この政権交代に関してワシントンが行っている干渉は、それ以上に厚かましい内政干渉だ。米国憲法に定められたアメリカ国民の基本的人権を実質的に剥奪し、ずたずたにする法的措置に署名したばかりのオバマ政権は[3]、まるで世界の最高裁判所であるかのように装い、彼らが「民主主義」と定義したものを厳守するよう他国を裁いている。

米国が選挙プロセスに介入したというプーチンの主張を詳細に検証してみよう。注意して見るならば、NED(米国民主主義基金)という無害そうな名称のついたワシントン拠点のNGOの年次報告書(2011年8月)には、彼らがロシア国内のあらゆる場所に存在していることが公然と記載されているのが発見できる。

NEDは、約80団体の国際NGOが、何であろうと望むがままに記者会見の場を持つことのできるモスクワの国際プレスセンターに資金を提供している。NEDは、「若者が積極行動主義で政治に関わることができる」ように、数多くの「若者支持(団体)」やリーダー研修会に資金を供給している。実際のところ、2010年12月期の1年度に、ロシア全域でそうしたプログラムに対し、公式に278万3千ドル以上を費やしている。2011年の支出は2012年後半にならなければ公表されない。[4]

また、NEDは、選挙の不正を主張しうる重要な立場を握っているロシアの「独立系」の世論調査・選挙管理の主要な部分に資金を出している。「民主的権利と自由を守る地域市民組織(GOLOS)」に一部の資金を出している。NEDの年次報告書によると、その資金は「報道機関の監視、政治的扇動や選挙委員会の活動の監視、その他選挙に向けた長期の準備期間における選挙法制の適用に関する側面を監視することを含め、ロシアの2010年秋と2011年春の選挙期間の詳細分析を実施」ために支出されたという。[5]

12月の選挙に先立つこと数ヶ月の2011年9月に、NEDは招待者限定のワシントンの会議に資金を出している。それは、ロシアの「独立系」の世論調査団体、レバダ・センターを積極的に支援することに主眼を置いていた。NED自身のウェブサイトによると、レバダ(やはりNEDの資金提供を受けている[6])は、国民感情を描き出すために西側で標準的に使用されている方法を用い、一連の世論調査を行っていたという。その世論調査では「ロシア議会選挙と大統領選挙の準備期間における有権者の意識、候補者と政党の認識、過去十年で確立された"管理された民主主義"のシステムに投票者が信頼を寄せているか」に関して輪郭を描き出した。

ワシントンの会議での主な講演者の1人に、ウラジミール・カラ=ムルザ(Vladimir Kara-Murza)がいた。彼は、ロシアの民主主義・反体制運動「ソリダリノスチ」(団結、連帯の意)の連邦会議のメンバーである。また、NEDによると、「ロシア議会の野党のリーダー、ボリス・ネムツォフ(Boris Nemtsov)の顧問」でもある。他に、右翼ネオコンのハドソン研究所からも講演者がやって来た。[7]

現在、反プーチン派で最も傑出した人物の一人であるネムツォフは、ソリダリノスチの共同議長でもある。この「ソリダリノスチ」という名称は、奇妙なことに、冷戦時代にCIAが資金提供したポーランドのレフ・ワレサの「連帯」の労働者運動の真似をしている。ネムツォフについては後述する。

そして、米国が後援し、ソリダリノスチなどの組織が率いる反プーチンの一連の抗議運動の立ち上がりにタイミングを合わせ、2011年12月15日、NEDは「ロシアにおける若者の積極行動主義~新世代は変化をもたらすことができるか?」と題した別の会議を開催した。その主な講演者はタミルラン・クルバノフ(Tamirlan Kurbanov)だった。NEDによると彼は「直近ではNDI(国際情勢・米国民主主義研究所)のモスクワ事務所で計画担当の職員をしており、政治団体や市民団体の育成と能力の拡張、公共生活への国民参加(特に若者の参加)の促進に携わってきた」という。[8] NDIはNEDの支部である。

NEDの怪しげな過去

若者が政治的積極行動主義に携わるのを支援するとは、まさに過去数年に、同じNEDがムバラク打倒に向けて率先してエジプトで行ってきたことである。また、確かな情報によると、2003~2004年にウクライナとグルジアで米国が支援する親NATOの代理人を権力の座につけた「カラー革命」でも、やはり同じNEDが活躍していた。ミャンマーでも、チベットでも、石油資源の豊富な中国の新疆地区でも、同じNEDが「人権」を推進するために活発に動いていた。[9]

2004年のウクライナの「オレンジ革命」など米国が資金を出した幾多のカラー革命を注意深く分析すると、世論調査をコントロールし、国際メディア(特にCNNやBBCなどの主要テレビ局)の認識を支配する能力が、ワシントンの不安定化〔政権交代〕工作の必須の要素になっていることがわかる。その意味で、レバダ・センターは、政権への不満があることを示す世論調査結果を出すために重要な立場にあるといえるだろう。

NEDは、自らのことを「世界中で民主的な仕組みを育成・強化することに専念した非営利の民間基金である。米国議会から資金を受け、世界90ヶ国以上で民主的な目的のために活動している海外の非政府団体のプロジェクトを毎年千件以上支援している」と説明している。[10]

実に崇高で気高いものだ。だが、NEDは自らの歴史は語りたくないようだ。ロナルド・レーガン大統領の当時、CIA長官だったビル・ケーシーは、CIAの直接行動ではなく別の手段でワシントンの世界戦略を推進するため、民間団体を装ったNGO、つまり、NEDを設立するよう大統領を説得した。NED設立の法案作成を手伝ったアレン・ワインシュタインは、1991年にワシントン・ポストのインタビューに応え、「我々が今日やっていることの多くは、25年前ならばCIAが隠密活動でやっていたことだ」と述べている。[11] NEDの最大の資金源は、米国議会であり、元をたどれば米国の納税者である。どこからどう見ても、米国政府の諜報活動の組織である。

NEDは、レーガン政権のときに、事実上のCIAとして機能するために設立された。より自由に行動できるように「民営化」されたCIAだ。NEDの役員は、通常、米国のペンタゴンや諜報機関の関係者から集められる。その中には、元NATO司令官のウエズレー・クラーク(1999年に米国のセルビア爆撃を指揮した男)がいる。CIAの秘密活動に関与し、NEDの役員を務めた主要人物としては、オットー・ライヒ、ジョン・ネグロポンテ、ヘンリー・シスネロス、エリオット・エイブラムズがいる。2008年のNED役員会の議長は、ヴィン・ウェーバーだった。彼は、超保守主義の組織、エンパワー・アメリカの設立者であり、ジョージ・W・ブッシュの選挙資金の調達係でもあった。現在のNEDの議長はジョン・ボーンである。彼は現在も瓦解を続けている米国のモーゲージ証券の崩壊で邪悪な役割を果たした、問題の多い格付け機関ムーディーズの元CEOである。同様に、現在のNEDの役員会には、ネオコンのブッシュ時代にイラク大使を務めたアフガニスタン系アメリカ人のザルメイ・ハリルザドがいる。[12]

入念にリハーサルされた反プーチン運動

最近のロシアで前面に出てきた主要な反対運動の人物を見てみると、教えられることが多い。現在、ロシアの若者と特に西側メディアがお気に入りの反対運動の「看板男」は、LiveJournalというブログを運営しているロシア人のアレクセイ・ナヴァルニー(Alexei Navalny)である。ナヴァルニーは、禁止された抗議運動に参加したためにプーチンの監獄で15日間を過ごしたことから、抗議運動の殉教者のような存在として注目されるようになった。モスクワで12月25日に行われたクリスマスの大規模な抗議集会で、おそらく1917年のロシア革命のセルゲイ・エイゼンシュタインのロマンチックな映画を見すぎて陶酔しているせいだろうが、ナヴァルニーは群衆に向かい「今、ここには、クレムリンとホワイトハウス(ロシアの大統領邸宅のこと)を占拠するのに十分な数の人々がここにいる」と語った。[13]

西側の主要メディアはナヴァルニーに夢中である。イギリスのBBCはナヴァルニーのことを「おそらく過去5年でロシアに出現した唯一の大型の反対運動家」と表現し、米国のタイム誌は「ロシアのエリン・ブロコビッチ」と呼んだ。ジュリア・ロバーツが労働組合の運動家として出演しているハリウッド映画を持ち出すとは奇妙なことである。しかし、それよりも意味があるのは、ナヴァルニーが、アメリカのエリートの集まる東海岸のエール大学(ブッシュ家の本拠地でもある)に行っていた事実であり、彼は「エール・ワールド・フェロー」〔世界各地の次世代のリーダーを大学が費用負担して育成するプログラム〕の一人だった。[14]

また、カリスマ的なナヴァルニーは、ワシントンの政権不安定化工作組織であるNEDに雇われている(または雇われていた)。ナヴァルニー自身のブログLiveJournalの記事によると、彼は2007~2008年にNEDから資金を受け取っている。[15][16]

ナヴァルニーの他にプーチン抗議運動に参加した主な俳優は、ボリス・ネムツォフ、ウラジミール・ルイシコフらが2008年12月に設立したソリダリノスチの周りに集中していた。ネムツォフは、とても腐敗に抗議するような人物ではない。2007年9月23日のビジネス・ウイーク・ロシアによると、ネムツォフはロシアの銀行家ボリスブレヴノフをグレチェン・ウィルソン(アメリカ国籍で世界銀行の融資部門のインターナショナル・ファイナンス社の職員)に紹介した。ウィルソンとブレヴノフは結婚した。ネムツォフの助けを借り、ウィルソンは、 Balakhnaパルプ・製紙工場をたった700万ドルの激安価格で民営化することに成功した。この製紙会社は吸いつくされ、ウォール街のスイスの投資銀行、CSファースト・ボストン銀行に売却された。この工場の年間売上は2億5000万ドルだったと伝えられている。[17]

また、CSファースト・ボストン銀行は、非常に高価なダボス世界経済フォーラムへの旅費をネムツォフに払っている。ネムツォフが閣僚になると、子分のブレヴノフはロシア統一エネルギー・システムの会長に任命された。2年後の2009年に、現在「ミスター・腐敗反対」と言われているネムツォフは、その影響力を行使し、統一エネルギー・システムの資産から何十億も着服した容疑がかけられていたブレヴノフを窮地から救い出したと伝えられている。[18]

また、ネムツォフは、投獄されたロシアのオリガルヒ、ミハイル・ホドルコフスキーからも1999年にカネを受け取っている。ホドルコフスキーが、ロシア議会を買収しようとして巨額の資金を使っていたときのことである。2004年には、国外追放になった億万長者のオリガルヒ、ボリス・ベレゾフスキーと、他にも追放されたロシアの大物たちと一緒に、秘密の集会で会っている。ネムツォフが、彼の新政党「無法状態と腐敗のないロシアを実現する党」の海外資金問題についてロシア当局に詳細を調べられると、米国のジョン・マケイン上院議員、ジョー・リーバーマン上院議員、オバマの国家安全保障会議のマイク・ハマーがやってきてネムツォフを支援した。[19]

ネムツォフの親しい仲間のウラジミール・ルイシコフ(ソリダリノスチ)もまた、スイスのダボス仲間と密接につながっており、シベリアのダボス仲間の発起人にさえなっている。2005年4月のロシアの新聞報道によると、ルイシコフは2003年に「2008委員会」を結成し、ボリス・ベレゾフスキーなどの逃亡中のオリガルヒやソロス財団のような西側の基金に資金を要請するとともに、獄中のホドルコフスキーの資金を「引き出し」しようとした。その活動の目的は、プーチンに対抗して「民主的」な勢力を結集させるという名目になっていた。2011年5月23日、ルイシコフ、ネムツォフ、その他数名は、表向きは2012年の大統領選挙でプーチンに対抗して候補者を立てるために、「人民の自由党」という新党の登録申請を行った。[20]

最近の反プーチンの集会で目立つ別の人物としては、元チェスの世界チャンピオンで右翼の政治家に転身したギャリー・カスパロフがいる。彼もソリダリノスチの設立者の一人である。カスパロフは、数年前、ワシントンのネオコンの軍のシンクタンクの役員であることが確認されている。2007年4月、カスパロフは、CSP(安全保障政策センター)の国家安全保障諮問委員会の役員であることを認めた。これは「非営利、無党派の安全保障組織であり、アメリカの安全にとって不可欠な政策、行動、資源を明らかにすることに特化している」組織である。ロシア国内では、カスパロフは、元ユコス副社長でミハイル・ホドルコフスキーのパートナーだったレオニード・ネヴズリンとの金銭的なつながりが以前あったことで悪名高い。ネヴズリンは、ユコスの副社長をしていたとき、「好ましくない人々」を排除するために殺人請負人を雇い、殺人をした容疑でロシアで告発され、イスラエルに逃亡した。[21]

2009年、カスパロフとネムツォフは、オバマ大統領からワシントンのリッツ・カールトン・ホテルに個人的に招待され、ロシアで反プーチン運動についてオバマと協議している。ネムツォフは、ロシアの反対勢力に会うようにオバマに要請し、「ホワイトハウスが、親プーチンの組織だけと話し合うようにというプーチンの提案に同意するならば(略)それはプーチンが勝ったことを意味する。だが、それだけではない。プーチンは、オバマは軟弱だと自信を持つだろう」と言った。その同じ2009年の米国訪問時に、ネムツォフは、ニューヨークCFR(米国で最も影響力のある外交政策のシンクタンクだろう)で講演するように招待を受けた。重大なことに、ロシア国内の反プーチン連合を築くために巨額の資金を注ぎ込んだのは、米国の国務省やNEDなどの米国が支援する政治的NGOだけではない。オバマ大統領も個人的にこのプロセスに介入していたのである。[22]

ルイシコフ、ネムツォフ、ナヴァルニー、アレクセイ・クドリン(プーチンの元蔵相)らは、いずれも、推定12万人を集めたという12月25日のモスクワの反プーチンのクリスマス集会に関与していた。[23]

どうしてプーチンなのか?

疑問なのは、どうしてこのタイミングでプーチンなのかということだ。それほど遠くに答えを探す必要はない。

ワシントン(特にオバマ政権)は、ロシアが民主的であるかどうかという観点からやじっているわけではない。彼らが心配しているのは、プーチンが大統領になると、ワシントンの地球完全支配計画の障害になるということだ。ロシアの憲法によると、ロシア連邦の大統領は、国家元首であり、最高司令官であり、ロシア連邦で最高の職位を保持する。防衛と外交政策を直接にコントロールすることになる。

どんな政策になるだろうか?ワシントンが危険な弾道ミサイル施設をロシアの周辺に築いていることからして、プーチンにとって重要度の高い課題は、明らかに、NATOの露骨なロシア包囲に対して強固な対抗手段をとることである。ヒラリー・クリントンの〔米露関係の〕「リセット」は(すでにゴミ箱に入ってなければ)ゴミ箱行きになるだろう。また、ロシアがエネルギーの切り札を使ってもっと攻撃的なパイプライン外交を展開し、欧州のNATO加盟国(ドイツ、フランス、イタリアなど)との結びつきを深め、究極的にはロシアに対するNATOの攻撃的な手段をEUが支持しにくくすることも想定できる。また、ロシアがユーラシア(特に中国、イラン、おそらくインド)にさらに目を向け、ワシントンの新世界秩序計画に対してよろよろしつつも抵抗の背骨を固めることも予想できる。

ネムツォフ、カスパロフなどの闇の腐敗した反対勢力がロシアを脱線させるには、あと数回以上、モスクワやサンクトペテルスブルグで氷点下のデモを行うことになるだろう。明白なのは、ワシントンがあらゆる前線で計画を推し進めていることだ。イラン、シリア(ロシアにとって重要な海軍の港がある)、中国、そして現在、ロシアであり、さらにドイツが率いるユーロ圏の諸国に対してである。それは没落する超大国の終盤戦の臭いを放っている。

今日の米国は、事実上、破産した核超大国である。準備通貨としてのドルの役割は、1944年のブレットン・ウッズ以来かつてないほどの困難に直面している。世界に無敵の軍事力としての米国を維持することに加え、このドルの役割は、1945年以来のアメリカの世紀の覇権の基盤となってきた。

国際貿易におけるドルの役割の弱体化、そして、最終的には準備通貨としてのドルの役割の弱体化につながるが、現在、中国はドルを回避し、日本と双方の通貨で貿易の決済を行っている。ロシアもまた、主な貿易相手国との関係で、同様の手順を踏みつつある。2009年後半にワシントンがユーロに対して全面的な通貨戦争を開始した最大の理由は、中国などがドルから離れて、ユーロを準備通貨とする脅威が増していたのを先制することにあった。これは決して小さな問題ではない。実質的に、ワシントンは、イラク、アフガニスタン、シリア、リビアなど海外での戦争資金を、中国などの貿易黒字国がその余剰のドルを米国政府の財務省の債券に投資しているという事実によって得ている。それが大きく変化するようなことがあれば、米国の金利は大幅に上昇し、ワシントンにかかる財政的な圧力は莫大なものになる。

唯一の超大国として挑戦されれうことのなかった世界的地位が蝕まれつつある状態に直面し、ワシントンは現在、むきだしの軍事力を使ってその地位を維持する方向へとますます転換しているようである。それがうまくいくためには、中国とイランもさることながら、ロシアを中立化させておかなければならない。これは誰がなろうとも、アメリカの次の大統領にとって基本的な課題になるだろう。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

関連情報

原文Regime Change in the Russian Federation? Why Washington Wants ‘Finito’ with Vladimir Putin (GlobalResearch)

脚注

[1] Alexei Druzhinin, Putin says US encouraging Russian opposition, RIA Novosti, Moscow, December 8, 2011

[2] Ibid.

[3] Jonathan Turley, The NDAA's historic assault on American liberty, guardian.co.uk, 2 January 2012, accessed in http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2012/jan/02/ndaa-historic-assault-american-liberty.

[4] National Endowment for Democracy, Russia, from NED Annual Report 2010, Washington, DC, published in August 2011, accessed in http://www.ned.org/where-we-work/eurasia/russia.

[5] Ibid.

[6] Ibid.

[7] NED, Elections in Russia: Polling and Perspectives, September 14, 2011, accessed in http://ned.org/events/elections-in-russia-polling-and-perspectives.

[8] NED, Youth Activism in Russia: Can a New Generation Make a Difference?, December 15, 2011, accessed in http://ned.org/events/youth-activism-in-russia-can-a-new-generation-make-a-difference.

[9] F. William Engdahl, Full Spectrum Dominance: Totalitarian Democracy in the New World Order, 2010, edition. Engdahl press.(邦訳は、ウィリアム・イングドール『ペンタゴン戦慄の完全支配』徳間書店、2011年)この本には、NEDなど米国がスポンサーになっているさまざまな「人権」NGOの起源と、それが米国の地政学目標にとって都合の悪い政権の転覆に利用されてきた経緯が詳述されている。

[10] National Endowment for Democracy, About Us, accessed in www.ned.org.

[11] David Ignatius, Openness is the Secret to Democracy, Washington Post National Weekly Edition, 30 September-6 October,1991, 24-25.

[12] F. William Engdahl, Op. Cit., p.50.

[13] Yulia Ponomareva, Navalny and Kudrin boost giant opposition rally, RIA Novosti, Moscow, December 25, 2011.

[14] Yale University, Yale World Fellows: Alexey Navalny, 2010, accessed in http://www.yale.edu/worldfellows/fellows/navalny.html.

[15] Alexey Navalny, emails between Navalny and Conatser, accessed in Russian (English summary provided to the author by www.warandpeace.ru) on http://alansalbiev.livejournal.com/28124.html.

[16] Ibid.

[17] Business Week Russia, Boris Nemtsov: Co-chairman of Solidarnost political movement, Business Week Russia, September 23, 2007, accessed in http://www.rumafia.com/person.php?id=1648.

[18] Ibid.

[19] Ibid.

[20] Russian Mafia.ru, Vladimir Ryzhkov: Co-chairman of the Party of People's Freedom, accessed in http://www.rumafia.com/person.php?id=1713.

[21] Russian Mafia.ru, Garry Kasparov: The leader of United Civil Front, accessed in http://www.rumafia.com/person.php?id=1518.

[22] The OtherRussia, Obama Will Meet With Russian Opposition, July 3, 2009, accessed in http://www.theotherrussia.org/2009/07/03/obama-will-meet-with-russian-opposition/.

[23] Yulia Ponomareva, op. Cit.