掲載2010年6月16日

内容紹介・訳者メモ

4月10日のポーランド大統領機墜落事故は謎めいている。ただの事故でないことは確かだと思うが、どのような意図で誰がやったのかというのはなかなか難しいものがある。真実に迫っていると思われる記事としては、事故発生から早々にヘンリー・メイコウ氏が書いたものがある。

ポーランド機の墜落現場で聞こえた銃声 By Henry Makow, Ph.D.

http://satehate.exblog.jp/14186602/ (さてはてメモ帳 Imagine & Think!)

だが、こうしたビデオが都合よく撮影できるものだろうかという疑問は残る。

そもそも本当に公式訪問団88名を含む96人が死亡したのかどうかという情報すら確実でない(私の知る限り、遺体の写真は報道されていないし、ポーランドに帰還した大統領の棺が空でない証拠がどこにあるのだろう?)。あまりにも情報が少なく錯綜している。そうなると、結果的に何が起きたかを見るしかない。

・ 事故直後にカチンスキ大統領が反対していたロシアのガスプロムとの契約が締結された。http://birdflu666.wordpress.com/...

・ ゴールドマン・サックスには(事故前から)ワルシャワに支店開設の計画があったが、その支店長にカジミェシュ・マルチンキェヴィチ(Kazimierz Marcinkiewicz、2005年にカチンスキー大統領によってポーランドの首相に任命されたが、一年後に解任され、ロンドンのゴールドマンサックスで働いていた)が就任する予定。

・ 事故で死亡したとされるスクシペク(Slawomir Skrzypek)中央銀行総裁は、親ユーロ・親IMFのドナルド・タスク首相と対立しており、輸出振興・雇用改善・税収アップのためにズロチ安政策を目指していた。http://birdflu666.wordpress.com/...事故後は第1副総裁のピョートル・ヴィエショウェクが代行していたが、ブロニスワフ・コモロフスキ大統領代行(20日に予定の大統領選で有力候補)の指名により6月11日よりIMF欧州局長のマレック・ベルカが中央銀行総裁に就任している(ポーランド国立銀行ホームページ)。

単純にロシアの犯行であるとすると、例えば親米のシコルフスキー(オックスフォード大学で教育を受け、米国のシンクタンクで働いた経歴を持つ。妻は、ユダヤ系アメリカ人、ワシントンポストのコラムニストでピューリッツァー賞を受賞している。要するに英米系)が標的になっていないのは何故か。一方、英米系の犯行であるとすると、事故後の調査のごまかし(死亡しておらず拉致監禁しているかもしれない)などをロシアの協力なくしてできるだろうかという疑問が生じる。事故処理に当たったロシア軍の兵士が現場で拾得したポーランド政府要人のクレジットカードを使い込んでいたというせこい話もでているが、そうすると本当に乗っていたということになるのだろうか。

いずれにしても結論的には、メイコウ氏の分析する通り、この事件についてはアメリカもロシアも超越したハイレベルな国際ネットワークの仕業ということになるのかと思う。対立の構図的には、ポーランドの民族主義 vs. 国際ネットワークということか。

事故の調査責任者となったプーチンは、今の世界主要国の政治家の中では珍しく自分で考えることのできる人間であり、国際ネットワークに(騙されることはあっても)マネーで操られる男ではないと私は思っている。プーチン本人が回顧録でいつの間にか大統領になったと述べているが、これは国際ネットワークに能力を見込まれ、設置された証拠であろう。だが、彼には金銭欲や権力欲といったいやらしさが感じられない。柔よく剛を制すの最後のどんでん返しをする可能性があると私は切ない期待を抱いている。

大統領機の墜落については、もっと深い事情があるような気がするが、とりあえずは、ロシアと米国の対立というものは、見せ掛けに過ぎないことが明らかになった事件であると思う。そんな中で今回の安保理の決議に関する記事を紹介したい。

米国・イスラエルのイラン先制攻撃に国連が「青信号」?

UN "Green Light" for a Pre-emptive US-Israel Attack on Iran? Security Council Resolution Transforms Iran into a "Sitting Duck"

ミシェル・チョスドフスキー

By Michel Chossudovsky

(globalresearch.ca)

2010年6月11日

国連安全保障理事会は、6月9日、「イラン・イスラム共和国」に対する広範な制裁措置(第4次)を課す決議をした。これには「より厳しい金融統制」とともに、武器輸出禁止の拡大が含まれる。

皮肉にも、この決議は、公海上でガザ自由船団(Gaza Freedom Flotilla)を攻撃したイスラエルを非難することを安保理がきっぱりと却下してから何日も経たない内に可決された。

また、これに先立ち、イスラエルの核兵器の解体とともに、核の無い中東を求める最終決議を行った国連主催のNPT(核不拡散条約)会議がワシントンで開催されていた。ジェーン軍備年鑑によると、イスラエルには100~300の核弾頭があり、世界第6位の核戦力がある(Analysts: Israel viewed as world's 6th nuclear power, Israel News, Ynetnews, April 10, 2010)。対して、イランには既知の核戦力はない。

安保理決議第1929号は、間もなく核戦力を身に付けるイランが、世界平和に脅威となるという根本的な虚偽の認識を根拠にしている。米国・NATO・イスラエルの軍事同盟は、懲罰的な先制核攻撃でイランを脅すことに青信号を与えるゴム印として安保理を利用しているだけである。

安保理は、制裁の適用にあたりダブルスタンダードを用いている。イランを懲罰の対象としながらも、イスラエルの大量の核兵器については、「国際社会」は無視または黙認する。イスラエルの核兵器は、ワシントンにとっては中東の平和の道具である。

また、核兵器を保有していないイランを寄ってたかっていじめておきながら、「非核国」とされる欧州五カ国(ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコ)の国家指揮下には戦術核があり、その矛先はイランを向いている。

国連安保理決議 第1929号(2010年6月9日):

第7条 イランは、INFCIRC/254/Rev.9/Part 1に掲げる核物質・技術の使用と製造、ウラン採掘に関わる国において商業活動の利権を獲得してはならない(特に、ウラン濃縮・再処理、核兵器を搭載可能な弾道ミサイルに関わる重水の事業と技術)ことを決定する。また、すべての国は、各所轄の領土において、イラン、イラン国民、イランで設立もしくはイランの管轄下にある法人、イランの利益を代理して行動する個人や組織、イランが所有もしくは管理する組織により、そうした投資がなされることを禁止することを決定する。

第8条 全ての国は、自国の領土を起点とするか否かを問わず、自国民または自国の管轄下にある個人により、または、自国籍の船舶または航空機を用い、自国の領土を起点または経由する、戦車、武装車両、大口径火砲、軍用機、戦闘ヘリコプター、戦艦、ミサイルまたはミサイル・システムの直接もしくは間接の供給、販売、輸送を阻止することを決定する。(略)また、全ての国は、自国民が、もしくは自国領土内より、または、自国領土を通じ、武器および関連物資の維持・使用、製造、供与、輸送、販売、供給に関する技術指導、資金・金融サービス、助言、その他の活動もしくは幇助をイランに提供することを阻止すること、および、この趣旨において、あらゆる武器と関連物資の使用、製造、供与、輸送、販売、供給に対する警戒・抑止を行うことを全ての国に呼びかけることを決定する。(Security Council Imposes Additional Sanctions on Iran, Voting 12 in Favour to 2 Against, with 1 Abstentionに、安保理決議1929号の全文がある。強調は著者)

武器輸出禁止がロシアと中国に意味すること

ロシア連邦と中華人民共和国は、米国の圧力に屈服し、決議を支持する投票をした。これはイランの安全保障にとって有害なだけでなく、ユーラシアという地政学のチェス盤における潜在的な競合国としての両国の戦略的地位を著しく弱体化することになる。

今回の決議は、軍事同盟のまさに核心部を衝いたものである。これで、ロシアと中国は、事実上の同盟国であるイランに、戦略兵器・通常武器と軍事技術を販売することができなくなる。実にそれこそが、ワシントンが熱心に押し付けた1929号決議の大目的の1つだった。

同時に、イランの通常兵器装備の購入を妨げることで、イランが米国・NATO・イスラエルからの攻撃に対して自衛することも妨害できる。

この決議が完全実施されれば、進行中のイランとの相互軍事協力の合意を無効にするだけでなく、SCO(上海協力機構)に亀裂を生じさせることにもなる。

また、イランとロシア・中国のパートナーとの取引・投資関係も大幅に弱体化する。決議にある財政・金融条項は、イランの孤立化にとどまらず、イランの金融システムの不安定化を狙うワシントンの決意を示している。

ワシントンは、この決議の実施に熱心である。ヒラリー・クリントン国務長官は、不拡散・軍縮担当特別顧問のロバート・アインホーンを、イランと北朝鮮に対する制裁措置の米国の実施担当に任命した。

オバマ大統領は、この決議によって、イラン政府は今まで経験したことのない厳しい制裁を受けることになり、イラン政府に核兵器の拡散阻止に向けた国際社会の決意を「間違いなく伝えるメッセージ」になるだろうと、決議を称賛した」(Clinton appoints coordinator for sanctions against Iran, DPRK、新華社通信、2010年6月10日

国務省のスポークスマン(P・J・クローリー)は、「全ての国が第1929号決議を果敢に実行することを期待している」と述べている。中国とロシアが決議(特にイランへの武器販売に関する第8条)に服従しないようなことがあれば、ワシントンは、北京とモスクワに対し、いよいよ挑戦的な外交を展開する理由にすることだろう。

この決議は、最新武器システムの製造・輸出での米国の覇権確立も狙っている。中国とロシアは、米・英・独・仏・イスラエルと競合しながら武器取引で儲けているが、こうした両国の武器取引にとっても、ほとんど「死刑宣告」に近い痛手になる。ソ連崩壊以降、脆弱なロシア経済を支えてきたのは武器取引であり、ロシアの国際収支への潜在的影響は甚大である。

イランのミサイル防衛システムを無力化

国連安保理決議は、米国の外交政策に不可欠な要素であり、外交評議会(CFR)、アメリカ・エンタープライズ研究所(AEI)、ヘリテージ財団などワシントンのシンクタンクが企画している。そのため、今回の決議の第8条の本質は、ロシアのS-300ミサイルなど「イランへの武器販売を阻止すること」を求めたヘリテージ財団の2010年1月の報告書に記載されている。

ワシントンとその同盟国は、外国製の武器のイランへの移転を阻止するために、あらゆる努力を行う必要がある。特に間近に迫っているロシアのS-300地対空ミサイルの販売は、イスラエルの攻撃を意外にも早く招く可能性がある。また、イランからヒズボラやパレスチナのテロリスト集団への武器譲渡を防ぐため、一層の国際的な努力が必要である。これはイスラエルだけでなく、レバノン、エジプト、ヨルダンの安定にとっても脅威になっている。11月3日、イスラエル海軍は、イランからシリア経由でヒズボラに500トンの武器を輸送していたアンティグア・バーブーダ国籍の貨物船フランコップ(Francop)を阻止した。米国は、イランの武器流通(特にヒズボラとハマスに向けたもの)を妨害するイスラエルに更なる支援を行うよう他の同盟国に圧力をかけるべきである。(James Phillips, An Israeli Preventive Attack on Iran's Nuclear Sites: Implications for the U.S, The Heritage Foundation, Washington, DC, January 2010)

モスクワは、この武器輸出禁止をどう評価したのか?

6月9日に安保理決議が採択された直後に、ロシアの複数メディアは、ロシアのS-300ミサイルの対イラン販売は凍結されるだろうと報道している。セルゲイ・ラブロフ外務相が、国連決議は防空技術の取引には影響しないと保証したにもかかわらずである。(Russia says in talks with Iran on new nuclear plants, Haaretz, June 10, 2010)

こうした矛盾した発表は、ロシアの指導者層の中に相当な分裂があることを示唆している。それがなければ、安保理決議で拒否権を正当に行使したはずである。

ロシアのS-300地対空ミサイル

ロシアの軍事支援がなければ、イランは攻撃されるのを座して待つだけの「カモ」になる。イランの防空システムは、ロシアの軍事協力が継続されなければ維持できない。さらに、イランが脱落すれば、ロシアは、米国-NATO圏の諸国に武器を売るしかなくなる。(イランへの武器販売の減少をイラクとアフガニスタンの取引で穴埋めするロシア、RIAノーボスチ通信、2010年6月11日を参照)

イランへの先制核攻撃

いま世界は危険な分かれ道にある。世界平和に対する本当の脅威は、米国-NATO-イスラエルの同盟から発している。国連の安保理は、西側軍事同盟の利益に直接貢献している。今回の安保理決議は、2004年以降ペンタゴンの計画書にあったイランへの先制核攻撃に事実上の「青信号」を与えたことになる。

「イラン空爆作戦の計画は、2005年6月から「準備OKの状態」になっている。この作戦の展開に必須の武器は既に配備されている」(詳しくは、2006年1月の「イランに対する核戦争」を参照)。2005年、ディック・チェイニー副大統領は、「通常核兵器と戦術核兵器の両方を用いた大規模なイラン空襲」を含んだ「非常事態計画」を立案するようにUSSTRATCOM(アメリカ戦略軍)に命じた(Philip Giraldi, Attack on Iran: Pre-emptive Nuclear War , The American Conservative, 2 August 2005)。

オバマ政権下でこの脅威はますます浸透し、ネオコンの頃よりもはるかに露骨になっている。2009年10月、アメリカ・エンタープライズ研究所(AEI)は、にワシントンのウールステッター会議センターで「イスラエルはイランを攻撃すべきか?」というイベントを開催した。

イランの核兵器開発は速いスピードで続いており、近隣諸国と国際社会の安全を脅かしている。ピュー・リサーチセンターの最近の世論調査によると、アメリカ国民の60%以上は、イランの核兵器開発の防止のためであれば軍事行動も是認している。イスラエルのダニエル・アーヤロン(Daniel Ayalon)副外務相は、イランの脅威に関してはイスラエルは「いかなる選択肢も排除していない」と9月21日に強調している。同じ日に、イスラエル軍のトップ(参謀総長のガビ・アシュケナージ)は、「イスラエルには自衛権があり、全ての選択肢は検討の余地がある」と繰り返し、イランの核施設に対する軍事攻撃の可能性を排除しない考えを明らかにした。

イランの挑発にどのように対処すれば最も効果的かについて議論が激化しているが、考えられるイスラエルによるイラン攻撃の戦略的・法律的条件を明らかにし、米国にとってどのような意味を持つのか徹底的な分析を行う時期である。(American Enterprise Institute, Should Israel Attack Iran?, October 2009, 強調は著者)

軍事的な見地からは、ペンタゴンの積極的な協力なしに、イスラエルが一方的にイランを攻撃することは不可能であろう。

オバマ大統領が、イランの核計画を中止させようと「手に何も持たず」テヘランと直接の対話を求めていた頃、ヒラリー・クリントンは、「前にイラクを攻撃したような感じ」で先制攻撃するとイラン首脳を恫喝する準備ができていたようである[2009年6月]。ヒラリーは、イラン首脳の立場で考える努力をすると言いつつも、(イランを先制攻撃する)「敵は他にいるかもしれない」とも言っている。これは明確にイスラエルを意味したものだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランの核計画(イスラエルにとって脅威と彼は解釈している)を中止するため、軍事行動の可能性を口に出している。(Don't discount Israel pre-emptive strike, Hillary Clinton warns Iran, Times Online, June 8, 2009、強調は著者)

2010年4月には、極めて明瞭なメッセージになった。ワシントンは、「『極端な状況』においてのみ核兵器を使い、非核国家は攻撃しないが、イランと北朝鮮は『別枠』として例外扱いする」。(Iran to Take US to UN Over Obama's Threat to Use Nuclear Weapons against Iran, アルジャジーラ、2010年4月11日)

ロバート・ゲイツ国防長官は「イランと北朝鮮は、核開発計画について何度も国連安保理の最後通告に逆らったため、米国政府としては例外扱いにした」とテレビのインタビューで語っている(同上)。

第3次世界大戦の脚本に「青信号」を出した国連?

この最新の安保理決議は、ワシントンが求めていた「青信号」なのか?

この決議内容は、イランに協力している中国とロシアにも向けられている。

拒否権を行使できなかった中国とロシアは、皮肉にも米国から無言の脅迫を受けている。中国は、米国の軍事施設に包囲されている。ポーランドとコーカサス地方に配備された米国のミサイルは、ロシアの都市を向いている。つい最近、オバマ政権は、ロシアの同盟国ベラルーシに対する制裁措置の延長を求めている。

また、ワシントンは「ペンタゴンは中央アジアでちょっとした建築ブームを起こす準備をしている。『トルクメニスタンとウズベキスタンを含む中央アジア5カ国全部に』米国の戦略的軍事施設を建設する」とも発表している。(Defense Dollars Building Boom: Pentagon Looks to Construct New Military Bases in Central Asia, Eurasianet, June 6, 2010)

こうした旧ソ連圏の国とのさまざまな軍事協力は、SCO(上海協力機構)とCSTO(旧ソ連圏の諸国で構成する集団安全保障条約)の弱体化を狙っているだけでなく、ロシアと中国の包囲網を築く米国-NATO戦略の一部でもある。

ワシントンとそのNATO同盟国は、国連安保理をコントロールしているだけでなく、究極的にはモスクワと北京の外交政策も支配していることが、今回の決議で伺える。

つまり、この決議は、「競合する超大国」という認識は神話に過ぎないことを明らかにしたのである。中国もロシアも、新世界秩序の従属国である。

少なくとも国際政治に関する限り、中国とロシアは歯の抜けた「張子の虎」だ。「張子の虎」とは、虎のように怖く見えるが、実際には無害なもののことである。

中国もロシアも、国連安保理で自ら行った間違った決定の犠牲になる。

イラン攻撃は、即座に軍事的なエスカレーションを招くだろう。シリアとレバノンも標的になる。中東・中央アジア全域に戦火が広がり、第3次世界大戦の筋書きへと進展しかねない状況になる。

これは掛け値なしの表現だが、米国-NATO-イスラエルの軍事的な冒険は、人類の将来を脅かしている。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

原文の紹介

原文 UN "Green Light" for a Pre-emptive US-Israel Attack on Iran? Security Council Resolution Transforms Iran into a "Sitting Duck"

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