掲載2011年8月23日

訳者メモ

世界に展開する米軍基地の統計を調べていたら、面白い記事に遭遇したので紹介しておきたいと思う。 我々は何かを「わかる」ために情報収集しているわけであるが、「わからない」という情報も大事である。米軍基地の数はペンタゴンの職員でも把握できていないという話である。

という話を聞いて、どんなことを感じられるかは、それぞれだろうが、私は何よりも、これが「民主主義」の旗手を自称する国がやることだろうかと思う。納税者に莫大な負担をさせながら(というより、金融利権のために国の債務を拡大しながら)基地を拡大しているというのに、それがどのように使われているのか、基本的な情報すら提供されていない。それを黙認しているアメリカ国民が、民主主義思想を深く理解しているとはとても思えない。ちなみに、そのアメリカの国の債務残高の全体像もよくわからない。

軍事機密だからという話でもなさそうだ。要は、軍事支出に注目を集めたくないのでわざとわかりにくくしているのだろう。

テロリストがアフガニスタンの洞窟に逃げ隠れしていると言っていながら、当の米軍そのものがどこにいるのかわからない状態なわけである。アメリカという国全体が巨大なテロリストである証拠だ。

デーヴィッド・アイクがよく「リビングルームに象がいるのに気付かない」という表現をするが、まさにこれがそうだ。

そして、専門家でも把握していないということに、コンパートメント化の極致を感じる。それぞれ自分の担当範囲のことしか興味を持たない。自分の仕事に忙しい状態である。支配体制は万全だ。

バカな人間を賢くすることはできない。狡猾な人間をさらに出し抜くような狡猾さが必要だが、そこまで頭の良い人間は、そんなことは面倒くさくてやる気がしない。こうして世界の支配・被支配のバランスは維持されている。

最後に、少し古いデータに基づいたものだが、個人の方の労作による米軍の世界分布図がこちらにある。ロシア・中国が包囲されている様子がわかる。

世界をおおうアメリカ軍基地 http://www.aoisora.org/hansen/hansen01.html

ところで、アメリカの基地は何箇所あるんだろうか?

Military mystery: How many bases does the US have, anyway?

グロリア・シュール・ビルチック

By Gloria Shur Bilchik

2011年1月24日

説明責任といえば、おそらく軍には厳格な説明責任があるはずと思ってないだろうか? 残念ながらそうではない。「アメリカは、国外に何箇所の軍事基地をもっているのか?」という質問は、簡単な質問に思えるだろうが、実は非常に難しい。

最近のアジア・タイムズの記事で、リポーターのニック・タースは、この疑問に対する答を「アメリカ人の誰一人として知らない数字」だと述べている。「大統領も知らない。ペンタゴンも知らない。専門家も知らない。誰も知らない」という。

ニュース記事から一貫性のある答を得ることはできない。これは確かだ。最近のメディアの記事、報道、特集を見ると、460、507、560、662、1,000以上など、さまざまな数を置いている。誰に質問するか、あるいは、どんな情報源を調べるかによる、とタースは書いている。

地球には1,000以上の米国の軍事基地が点在している。具体的に言えば、最も正確な数は1,077だ。もし1,088でなければ。あるいは別の数え方をすれば1,169になる。もう少し多くて1,180だ。実際には、もっと多いかもしれない。誰にも明確にはわからないのだ。

情報源を辿っても無駄だ。国防総省の「2010年・基地構造報告」によると、2009年現在、米軍は世界中の38カ国で662箇所の在外拠点(サイト)を維持している。しかしこの数は、数年前に国防総省が報告した数字から減少している。

軍の広報は、さらに混乱に拍車をかけるのが常だ。タースはこう述べている。

昨年前半、上院予算割当委員会の軍事建設・退役軍人・関係機関に関する小委員会の場でドロシー・ロビン国防副次官は、ペンタゴンの「507箇所の恒久施設」という言い方をした。一方、国防総省の「2010年・基地構造報告」には、米国内、米領地内、海外の合計で4,999箇所が掲載されている。

タースは、こうした数字の記録管理をしているはずの軍の職員にインタビューしたり、公式の情報源に当たったりして、宿題を終えた。軍事記録管理の世界を旅してきた彼の報告を読むと、まるでフランツ・カフカの小説そのままだった。部署によって、報告書によって、数字が変わる。増えたり、減ったり。誰が数えているかによって依拠する算定基準が変わる。結局彼は混乱し、絶望した。

「最後」の数字に辿り着くまでの道中、私が得た互いに矛盾する数字が発生する理由について様々な説明を聞かされた。計算方法の違いであるとか、戦闘中の部隊の数が漏れているとかだ。何ヶ月もの間、電子メールをやりとりして、数字が激しく揺れ動くのを眺めていると、私が調査を始めた1月の数字と、11月の数字はだいたい同じだった。ということは、アメリカの司令部はアフガニスタンの基地の数を正確に追っていないことを意味する。どうやら軍は、最重要の作戦場所に基地が何箇所あるのか単純に知らないようだ。

さらにひどいのは、意図的に集計から漏らしている様子があることだ。「国防総省の2010年・基地構造報告でアフガニスタンの拠点数を調べてみるとよい」とタースは述べている。「さあ、どうぞ。全206ページを最初から最後まで読んでみよう。アメリカがアフガニスタンに基地を持っていることは一言も書いてない。まして400箇所以上もあるなんて書いてない。引用も、参照も、暗示すらない」

信じられないことに、イラクにも同じ灯火管制(記載のないこと)がなされている。主流メディアの報道ではイラクの基地数は80箇所台になっている。つまり、公式の米軍の集計であっても、約500箇所が過少に報告されている。それに加えてサウジアラビアとかクウェートについても数字が無い。

さらに基地数の集計で都合良く「忘れられている」ものに、米国の代理で他国が運営する施設、CIAが隠密で運営する拠点、海に浮かぶ事実上の基地(空母)があるとタースは述べている。

では、本当のところ、何箇所なのか? それは我々にはわからない。緊急に我々に教えてくれそうな人がいないことも明らかである。タースはこう結んでいる。

壮大な計画においては、本当の数字さえあれば良いわけでもない。在外基地の正確な数が、900だろうと、1,000だろうと、1,100であろうと、否定できないのは、米軍は、あまりにも巨大なおぼろげな基地帝国を維持していることである。その本当の規模・範囲は、ペンタゴンの職員でさえも、知らない。アメリカの在外基地の数を正直に漏れなく数えることは、アメリカの世界的任務をダウンサイズ(縮小)するための最初の小さなステップだろう。

(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)

関連情報

原文 Military mystery: How many bases does the US have, anyway? (Occasional Planet)

ペンタゴン 基地構造報告Base Structure Reports (U.S. Department of Defense)